音楽セミナー 第1回
2014年8月23日(土)
今回は,自己紹介を兼ねて,これまでに作ってきた音楽を聴いてもらいながら,その時々に考えたことをお話しします.
このページで紹介する音源は,個人で聴くために自由にダウンロードしていただいてかまいません.ただし,二次配布はご遠慮下さい.第3者に紹介したい場合は,このページのURLを紹介して下さい.
大学時代(1977–1984)
中学,高校とフォークギターを弾き,高校3年でクラシックギターに転向したので,大学時代の自作曲は,フォークギター用のソロ曲をクラシックギターで弾いてみた,という感じです.
A Walk 1980ごろ作曲,2005.12.6録音
無題 1982ごろ作曲,2006..2.24録音
ニューヨーク留学(1984–1986)
大学院博士課程1年の時にニューヨークに留学しました.その時住んでいたInternational Houseには音楽系の学生がたくさんいて,毎週のようにイベントがありましたので,曲を作っては演奏家の友達をつかまえて,一緒にイベントに出演したりして遊んでました.今から考えるとものすごく恵まれた環境だったと思います.
Boatmen's Song 1985.3.31作曲
Errin Taggart (vc), M Wada (gt) 1985.11.17 Salon RecitalHeart 1984作曲
Lisa LaCross(fl) M Wada(gt) 1986.5.11 International House NYWater Mill 1985.10.3作曲
Lisa LaCross (fl), M. Wada (gt) 1986.5.11 International House NYLullaby of A Star 1986.2.25作詞作曲
Moonyon Kim(sop) M Wada(gt) 1986.3.21 Cafe Esperanto
ギター曲もいくつか作りました.
昼下がり 1985ごろ作曲,2005.11.21録音
フィラデルフィア(1987〜1991)
結婚して就職して子供ができて,音楽活動はあまりしなくなって,買った電子ピアノの練習用にピアノ曲をいくつか作ったぐらいです.コンピュータで音楽作りをしたいと思いましたが,当時のコンピュータではブザー音みたいなものしか鳴らせませんでした.
Logan Circle 1989.11.4作曲,2006.5.19打込み
帰国(1992)
帰国後は,まわりに音楽をやっている友達もいなくて,研究が忙しくなり,いつの間にか音楽をゆっくり聴くこともしなくなって10年以上過ぎていました.当時作った唯一の曲らしい曲です.
無伴奏楽器のためのソナタ 1994.1.14作曲,2007.7.16打込み
音楽活動再開(2005秋)
このまま音楽無しで人生を終えるのはイヤだ.もう一度留学時代みたいに音楽のある楽しい毎日を過ごしたい!
と,思ったのが47歳ごろ.10年以上ブランクがあってツテもなんもないところからの再スタートなんで何から始めればいいか全くわからない. わからないから,思いつく限りのことを全部することにしました.
まず,作曲のために和声学や対位法の勉強をする.でも楽譜を書いたところで,どこの馬の骨ともわからない作曲家の楽譜なんて見向きもされないだろうから,作った曲を直接耳に届けるために,音源を作る音響技術の勉強も必要.音楽制作用コンピュータソフトやオーディオインタフェイス,マイク等の機材も揃える.クラシックギターと電子ピアノだけでは楽器のバリエーションが少なすぎるのでエレキベースと電子パーカッションを購入.ギターやベースでアドリプの練習も始める.自分がどんなジャンルで活動したいのかもはっきりしないので,とりあえず一通り作ってみることに.
Will You Dance With Me 2005.12.25 作曲,2006.5.15録音+打込み
ジャズはよくわからないけれど,ウォーキングベースというベースラインがどういう規則で作られるかがわかりました.
あしたに向かって 2006.1.27作詞作曲
和田昌昭歌・ba,chara gt2006.12.6制作
ロックもやってみました.ハイハットとか何のことかさっぱりわからないところから始めて,ドラムの打込みと音作りの基本をマスター.エレキギターはネット友達に弾いてもらったけれど,自分でやらないとよくわかりません.
おはよう 2006.3.5 吉田智江作詞 和田昌昭作曲
吉田智江歌,和田昌昭gt 2007.2.19
奈良女子大学学生の吉田さんに作詞と歌を頼んで作ったポップス風の曲.ちょっと弾けるようになってきたクラシックギターのアドリブをフィーチャーしたけれど,弾きすぎでうるさいかも.
Mistletoe 2006.4.7作曲,2007.3.12制作
一度やってみたかったラテン音楽も一通り勉強.ダンスを習い始めた男の子(ベース)が先生のお姉さん(ピアノ)にダンスを教えてもらうという設定.
カラス 2006.4.9作曲?
これまでいろんな曲を作ってきたけれど,5歳の子供が笑ってくれたのはこの曲.
ナビータ奈良(2006〜2007)
ならどっとFMのブログサイトで細々とブログを書いていた時期があります.
初めてのデート 2006.8.25作
ブログ友達のひとみん☆さんのコメントに大受けして歌にしてしまいました.
カタツムリと森の妖精 2006.8.13作
holidayさんのクレヨン画に触発されて初めてのシンセサイザー音楽に挑戦.
アジアの風 2006.9.25
祭り囃子のような繰り返すリズムの快感を意識しています.この時期にはガムランなどのアジアの音楽にも興味を持っていました.
トッカータとフーガ ニ短調(J.S.バッハ作曲) 2007.6.21編曲
シンセサイザーつながりで,バッハの有名なトッカータとフーガをアレンジ.1970年代に流行っていた感じです.パイプオルガンはバロック時代のシンセサイザーだったんですよね.下はトッカータ部分のアレンジ画面です.テンポが大きく変化しているのをオートメーションで表現しています.
ナビータブログは1年余りで閉鎖.自分のウェブサイトを作ることにしました.
インディーズ音楽を聴く
売り出し中の若手音楽家がどういう活動をしているかにもとても興味を持っていました.
小林未郁 ハテヌイノチ
インディーズ音楽サイトmf247で聴いた小林未郁さんの抜群の歌唱力に惹かれて,CDを買ったりライブを聴きに行ったりしました.しばらく見ないうちに,進撃の巨人,キルラキルなど,アニメのサントラに参加したりしてるみたいですね.
2005.11.20 Lock on Rock Festivalのウェブサイトで公開されていた予選通過の150組を何日かかけて聴きました.下は関西グループで個人的に注目した2組.
NOKUTSU morning sun
ジャズ風味のポップスでとてもおしゃれな音楽.音作りもしっかりしていて聴いていて心地よい.ライブに行って3曲入りのCD-ROMを5千円で買ってあげたりしたけど,残念ながらグループは自然消滅.いい音楽をやっていれば必ず生き残れるというものでもないんですよね.
vin-PRAD 雨上がりランデブー
音作りが荒っぽいけれどアレンジが秀逸.と思いながら見ていたらグループ解散.でもアラケンさんはアレンジの腕を買われて今は美少女ゲームの音楽プロデューサーとかやってるみたいです.
他にも気になった音楽家はけっこう追いかけて見てますけど,やりたい音楽と仕事が両立している人は少ないと思います.
木管三重奏
いろんなジャンルを一通りやってみて,どれも面白いんだけれどそればかり続けていると飽きる気がする.飽きないのは昔から聴いてるクラシック系の音楽かな.ということで,木管三重奏の曲を作ることにしました.友達どうしで集まって食後に音楽でも演奏して楽しもうという時に演奏したくなるような曲を作りたい,というのがずっと考えていることなんですが,弦楽四重奏やソロ楽器とピアノの組合せだと有名な曲が既にたくさんあるので,ありそうであまりない組合せということで木管三重奏を選んだわけです.
フォーレ Dolly組曲より スペイン舞曲 2007.5編曲
練習にフォーレのピアノ二重奏の編曲をやりました.原曲はかなり音数が多いです.それを原曲の趣を損なわずに3声まで減らそうということですが,この編曲はすごくいい勉強になりました.作曲の勉強がしたければ,教科書なんか読むより,本物の曲のアレンジを自分で試みるのがオススメです.
2007〜2010年にかけて木管三重奏の小品を30曲ほど作曲しました.その中から24曲を選び,音楽活動再開から5年目の2010年秋にCDをプレスしました.
前奏曲ロ短調 2007.10.16作曲
前奏曲ハ長調 2007.11.11作曲
木管三重奏以外のクラシック系音楽
もちろん,木管三重奏ばかり作っていたわけではなくて,他のジャンルの曲を作ったり,木管三重奏曲を他の楽器用に編曲したり,逆に他の楽器用の曲を木管三重奏にアレンジしたり,いろいろやっています.
乙女の夢 2008.7.6作曲
曲を作るたびに不協和音が気持ち悪いとか音の使い方がおかしいとか散々批判されるので,そんなに言うならストレートなクラシック曲を作ってやろうじゃないの,と作ってみたんだけど,やはり途中でクセが出て並行五度とかやってしまいました.タイトルは,「乙女の祈り」と「愛の夢」の「勝手にシンドバッド」.(通じないか)
March of the Cubes(金管八重奏曲)2009.1.3作曲
奈良女子大学の三方裕司氏に誘われて作った金管八重奏曲.三方さん所属のオリオン・ブラス・アンサンブルに初演してもらいました.タイトルは,マーチング・キューブズ法という立体再構築アルゴリズムの名前からとりました.
ハート フルート四重奏 2009.3.12編曲
フルートとギターのための原曲をフルート3+アルトフルートの四重奏に編曲して欲しいという依頼を受けて編曲したものです.頼まれてがんばって編曲したのに,演奏してもらえたかどうかもわかりません.無名のアマチュア作曲家の扱いなんてこんなもんです.
ワルツ 弦楽三重奏版 2009.8.16編曲
Kirk Hunterの弦楽器サンプル音源を用いて,木管三重奏曲を弦楽三重奏にアレンジしたものです.弦楽器演奏者なら違和感があるかもしれませんが,僕なんか言われなければ気がつかないレベルになってきています.1990年ごろにブザー音しか鳴らせなかったのとは隔世の感があります.
アライブ
ナビータブログに音源を載せてせっせと記事を書いていたころコメント欄に,アライブというコーラスグループの森田有起さんから,カラオケ音源を作って欲しいという書込みがありました.作曲の依頼ではないですが,当時は音楽家と何のつながりもありませんでしたから,こういう出会いは大切にしないといけないと思い,頼まれたカラオケをがんばって作りました.
ルージュの伝言カラオケ 2006.11.11
ユーミンの有名な曲のカラオケ音源です.エレキギターの音作りやトレモロ,ポップスでのストリングスの使い方など勉強になりました.
Trickle Trickle カラオケ 2006.12.2
Manhattan Transferの曲のカラオケ音源です.サックスソロを打込みで表現するのにずいぶん苦労しました.
Operator 2007.6.14
こちらは半年後の音源ですが,サックスの打込みが上達してますね.
しかしアライブは間もなく解散してしまいます.
由瑠凛楽
森田さんが次に結成したのは,森田(テノール),尾崎(フルート),古本(クラリネット)の3人によるクラシックのグループ.一体どういう発想をすればこういう組合せのグループを作ろうと思うのか,僕には及びもつきません.
その由瑠凛楽というグループが2009年にCDを出すことになります.遷都1300年祭に向けてということで,オリジナル曲あり,音頭モノありのCDです.
まず,楽譜を渡されて音頭のアレンジを行いました.それを元にスタジオでプロがアレンジし直したCD音源がこれです.スタジオに呼んでもらってプロの録音やアレンジの仕事を見せてもらい,ものすごくいい勉強になりました.
練習やライブでの録音等でお手伝いさせてもらっていたこともあり,CD用に曲を書いてみませんかと声をかけてもらいました.もちろん,全力でがんばって作りました.
平城京(ならのみやこ) 2008.7.31「美わし倭」CDより
この曲は由瑠凛楽メンバーに気に入ってもらえてCDに入りました.その後,森田さんの平城遷都1300年記念県民大合唱という企画でも取り上げてもらい,なら100年会館の大ホールで200人以上で合唱してもらったのがこちら.
平城京(ならのみやこ)2010.10.23 なら100年会館
ライブ演奏
思いつく限り何でもやってみるということで,自分でライブ演奏もいくつかやりました.自作曲をライブで演奏してもらったものもいくつかあります.
ユーリディケ 2007.12.1作曲
尾崎則子(fl) 和田昌昭(gt) 2008.5.30 平風楽コンサート
由瑠凛楽の尾崎さんに誘われて,老人福祉施設のボランティアコンサートに出演しました.自作曲はいいのですが,それ以外に当日演奏する十曲ぐらいの楽譜を3日前ぐらいに渡されて大慌てで練習しました.(^^;
迷宮 2008.6.12作曲
三方裕司(tpt) 中川麻美(tpt) 太田智子(pf)
2008.10.28 奈良女子大学ランチタイムコンサート
三方さんに頼まれて2本のトランペットとピアノのために作った曲です.コンピュータでは簡単に鳴らせても,実際に演奏してもらうと息が持たないとか,経験を積まないとわからないことも多いです.
Sylph 2007.10.23作曲
皆藤千穂(vln) 和田昌昭(gt) 2008.12.16 奈良女子大学ランチタイムコンサート
奈良女子大学ランチタイムコンサートに大学院生の皆藤さんと出演しました.
歌
平城京(ならのみやこ)の作曲を機に歌に対する興味が高まります.
頌歌 2009.5.17作曲
岡田由美子(sop) 北口裕子(pf) 2009.6.20 王子ミュージックサロンオーケストラ伴奏版 2012.10.6
ソプラノの岡田さんに頼まれて,稲葉邦子さんの詩に歌をつけました.
宿酔 2009.7.5作曲
中原中也の「山羊の歌」の詩に次々と曲をつけてせっせと歌曲を作っていたのはこのころです.合唱の人から歌い方がけしからんと怒られたりしてました.ジャンルからはみ出すとそうなるんですよね.
The Twelve Days of Christmas 2009.9.18編曲
2009.12.23 いい菜里合唱団クリスマスコンサート
マドリガルなどルネサンスごろの曲が好きというアマチュア混声合唱団のために,クリスマスキャロルを編曲しました.
薔薇 2011.7.31作詞作曲
数え歌つながりで作った曲.5本のバラが5つの声部に対応していて,1本売れるたびに伴奏の声部が一つずつ減って行くところが聴き所.
吉田ともえさん
奈良女子大学で一緒に曲作りをしてもらった吉田さんは,今はシンガーソングライターとしてソロで活動したり,AYNIW TEPOというグループで活動されています.
まちくさのうた シンセバージョン 2011.2.15編曲 2012.5.2ムービー
吉田さんのピアノ弾き語りアルバムの録音をお手伝いしたときに,自由にアレンジしてみて欲しいと頼まれて作ったものです.シンセ音楽だけど暖かみがある音ということで凝ってみました.ムービーには,吉田さんのアルバムのコンテンツを使わせていただいています.
文那 大多喜清香・和田昌昭作詞
2011.3.18作曲 吉田智江歌
奈良女子大学の卒業生で今も交流がある大多喜さんが,子供が生まれたときの気持ちを書いてきて,それを曲にして欲しいと頼まれて作ったもの.歌にできる程度まで言葉や字数を整えることから始めて,作曲したものをオーケストラアレンジして,吉田さんに頼んで歌ってもらって,最後はCDにしてiTunesやAmazonのカタログに載せるところまでやりました.こういうことを収益度外視でできるのがアマチュアの特権です.文那ちゃんが大きくなったときに,どう思ってくれるかな.
その他
Hummered Dulcimerのためのラプソディー 2011.6.7作曲
ハンマーダルシマーはピアノの原型と言われる楽器で,箱にピアノ線を張ったものをバチで叩いて音を出します.かしはまきりえさんの依頼でハンマーダルシマーのために書いた曲ですが,A(主調),B(属調),A'(主調) ,B(主調)と来て最後に主調でA+Bが融合するところが聴き所.
歌の贈り物 2011.9.24作曲
ソプラノの中川令子さんからFMハイホーの番組「音楽の贈り物」のオープニング曲用にと依頼されて作った曲.こちらは,A(主調),B(属調),A'(主調) ,B(属調)と来てやはり最後に主調でA+Bが融合するのがこのころのマイブーム.
シルバームーン 2012.2.22作曲
自身の結婚25周年に作って家内に贈った曲.今度こそストレートなクラシック曲をと意気込んで作ったものの,聴いた人からこれだったらショパンでいいんじゃない?とか言われる始末.いったいどうすりゃいいんだよ.(笑)
China Girl 2012.9.23 ムービー
音楽活動再開7年目にピアノ作品集のCDを発売.そのジャケット用に4男に作ってもらったレゴピアノを使って作ったムービー.
思いつく限りのことをやって7年突っ走ってきたつもりだったけど,こちらから積極的にアプローチしたうちの一部の人が興味を持ってくれるだけで,大きく注目されることもなく,これが自分の限界かなと感じてました.
探偵!ナイトスクープ
阪大数学M2の学生たちに引っぱりだされる形で探偵!ナイトスクープに出演したのは,そんな時です.流行は音楽の良し悪しとはあまり関係がない,というのはそれまでたくさん実例を見てきていたわけですが,その流行がひょんなことから僕のところにやって来たという感じです.
でも,この波に乗って有名になって世界中で自分の曲が演奏されるようになって欲しいとは思わないんですね.音楽の趣向は人それぞれでいいです.万人に自分の個人的な音楽の趣味を押し付けたいとは思わない.
たくさん人がいれば,きっと中には僕の音楽を気に入ってくれる人も少しはいるでしょう.そういう人が僕の音楽を聴いて,あるいは演奏して,ちょっと幸せな気分になってくれたら僕はそれで十分です.でも,僕の音楽を気に入ってくれるかもしれないほんの一握りの人達に僕の音楽を知ってもらうことがとても難しいことなんです.宿酔がきっかけで僕の音楽を多くの人に一度聴いてみてもらえるようになったことは,とても有り難いことだと思っています.