Masaaki Wada (watercolor portrait by Jesus Guajardo)
作曲家 和田昌昭
Masaaki Wada
Composer
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宿酔バンド

人気番組でデビューし,初めてのライブで1曲だけの演奏のために千人もの聴衆を集め,2回目のライブでいきなり解散.

誰かつっこんでよ.(笑)

探偵!ナイトスクープ

2014年3月7日放送の朝日放送番組「探偵!ナイトスクープ」で大阪大学数学教室の学生達と「宿酔」のセッションをした後,番組を見た人達が誰とはなしに「宿酔バンド」と呼ぶので,自分達でも宿酔バンドと呼ぶようになったものです.正式にバンドを結成したわけではないんですよね.

いちょう祭ミニライブ

番組放送後急に「宿酔」が話題になったことから, 大阪大学卒業生室より,5月のいちょう祭でミニライブをやってもらえないかと打診がありました.番組出演した学生はほとんど卒業してしまっていましたが,ドラムの小西君と,ピアノが弾ける関君が残っていたので,2人に頼んでいちょう祭のステージで「宿酔」を演奏することにしました.

僕はベースの弾き語りなんてやったことがありませんでしたし,そもそもバンド演奏の経験がありませんでした.小西君も以前に吹奏楽団でドラムを叩いていただけ,関君はピアノを弾くといってもクラシックでしたから,ノリと勢いで引き受けたという感じです.でも,演奏するのは宿酔1曲だけですし,1ヵ月ありましたから,なんとかなるだろうとは思っていました.

宿酔のバンドアレンジは簡単です.ヴォーカルとピアノは原曲のまま.ベースはピアノの左手をそのまま弾いて適当に音を省略.ドラムは基本的な部分だけ決めてあとは小西君のフィーリングで叩いてもらう.ですから,アレンジらしいアレンジはしていないとも言えます.3人で個別に練習して,スタジオで練習したのは3回ぐらいだったと思います.

5月3日のいちょう祭「宿酔」ミニライブは千人もの観客が来て大盛況でした.はるばる東京,千葉,福岡,福井などから駆けつけて下さった方もおられて,とても嬉しい反面,そこまで熱心に聴いて下さる方達の期待を裏切らないように,ということで大変なプレッシャーも感じました.

まちかね祭

いちょう祭ライブの直後,大学祭中央実行委員会の方からコンタクトがあり,11月のまちかね祭でライブをしませんかというような話になりました.いちょう祭の人気で浮かれ気味の学生達はやる気満々なんですが,1時間枠でお客さんを満足させるのがどれだけ大変かわかっているので,二つ返事では引き受けられません.大阪大学卒業生室の後援や音楽制作サークル・ラムレーズンの協力をお願いしながら,それではお引き受けしましょうというような話になりました.「宿酔」に関する熱狂とも言える流行がいつまで続くか予想がつきませんでしたが,まちかね祭で何もしなければ,バンドライブをするチャンスはもうないかもしれないとも思いました.

一つ問題なのは,僕は今年度専攻長でしかも例年になく仕事が忙しいことです.夏休みになればアレンジや練習の時間が取れるだろうと思っていましたが,なかなか時間が取れずに予定が遅れて行きました.

5月のいちょう祭ではドラム,ピアノとベース弾き語りという変則的なバンド編成でしたが,6曲も演奏するとなると,やはりギターがないとアレンジが難しいですし,コーラスの厚みも必要と考え,すでに就職している村上君にギターで加わってもらうことにしました.でも練習時間など合わせるのが大変でしたし,村上君のほうでも練習時間など大変だったようです.

プロのバンドと違い大学祭中央実行委員会から出演料なるものは一切出ないのですが,音楽サークル所属でもない数学の学生がドラムやステージ用キーボードやギターアンプを持っているわけもなく,演奏当日はステージ用に楽器をレンタルする必要があって3〜4万円かかります.なるべく個人で練習するようにしましたが,それでも数回は実際に合わせてみる必要があり,その度にスタジオ代が5千円ずつかかります.自分から出たくてステージに出演しているのならそんなのは自腹で当然でしょうが,僕は一応頼まれて出演しているわけです.お客さんが満足する演奏をするために頑張れば頑張るほど僕だけ金銭的負担が増えて行くというのも納得いかない話です.かといって,まちかね祭を盛り上げるためにボランティアで働いてくれている大学祭中央実行委員会にあまり負担を押し付けたくはないですし,難しい問題です.アレンジや練習だけでも大変なのに,金銭の心配までしなければならないのが一番大変でした.

いろいろ考えた末に,バンドアレンジのCDアルバムを作って会場で売って赤字の補填をしようということにしました.なるべく安くして,6曲入りCD1枚300円ならば,お客さんに気持ちよく買ってもらえるんじゃないかと考えました.まあ,それはいいのですが,アレンジに加え,CD音質の音源まで作らなくてはいけなくなって,ただでさえ忙しいのに,ますます自分の首を締めてしまったようにも思います.

宿酔バンド解散コンサート

まちかね祭のライブのタイトルは「宿酔バンド解散コンサート」としました.初めに探偵ナイトスクープありきのバンドなんで,メンバーが変わってしまうと「宿酔バンド」ではなくなってしまいます.ドラムの小西君が来年3月に卒業してしまうので,「宿酔バンド」として演奏できるのはこれが最後の機会ということで,ちょっと大げさな名前にしました.

テレビ番組のおかげで人気が先行したなんちゃってバンドがこれ以上表舞台で演奏を続けるのは無理という僕の判断もありました.演奏技術に関して言えば,僕らより上手なバンドは腐る程あるわけです.たまたまテレビ番組で人気が出たという理由だけでチャラチャラしているのは僕は好きではないけれど,自分がまさにそれっていうのは悲しいです.

バンドメンバーの学生達は,おそらく僕に遠慮して,音楽に関して自分の主張をほとんどしません.僕の意向を尊重しているつもりなのだろうけれど,けっきょく僕が演奏の細かいことまで決めて指示をしなくてはいけなくて,それも大きな負担でした.教授と学生でバンドをやってることの限界のようにも思います.このへんが宿酔バンドの潮時だというのは,メンバーも感じていると思います.探偵ナイトスクープに出演するきっかけを作ってくれた学生達には感謝していますが,もう十分お返しできたんじゃないでしょうか.

11月1日に宿酔バンド解散コンサートを行いました.5月のいちょう祭では,何か珍しいものでも見たという感じで演奏そっちのけで写真やビデオ撮影に忙しそうなお客さんがいっぱいだった気がしますが,今回はみなさん音楽に耳を傾けて下さっていたように思います.

「宿酔バンド」CD

宿酔バンド解散コンサートの赤字補填目的で制作したCDです.紙封筒でジャケットなし6曲入りで300円という価格設定にしてみました.この価格なら200人ぐらい買ってもらえるんじゃないかと期待しましたが,ライブ当日の販売数はその半分にも満たず,制作のためにつぎ込んだ時間や労力を考えると,はっきり失敗だったみたいです.(笑)

最後に

いろいろ僕の判断ミスもありました.愚痴ぽいことも書いちゃいましたが,宿酔バンドを通じていろんな人に遇えて楽しい時間を過ごすことができ,大変幸せなことだと思っています.

それに比べれば,お金なんてちっちゃいことはもうどうでもいい,と言いたいけど,次に何かするためにはどうでもよくないんですよね,これが...辛い.(笑)