Masaaki Wada (watercolor portrait by Jesus Guajardo)
作曲家 和田昌昭
Masaaki Wada
Composer
English page
  1. 著作権
  2. パッケージング
  3. 流通
  4. JAN
  5. ISRC
  6. 広報

レーベルの作り方 3. 流通

CD販売

昔はCD卸がCD販売店をまわってCDを棚に並べ,実際に売れた分だけ売上の70%を徴収するという商売でしたが,今はCD販売店が卸から定価の85%で買い取りです.売れて15%の儲け,売れ残ったら85%の赤字では商売になりませんから,CD店は大部分倒産し,数えるほどになってしまいました.

確かタワーレコードはインディーズCDを扱っていたはず,と思って問い合わせてみたところ,現在は個人レーベルとの取引はしていないこと.

差出人: <dist_info@tower.co.jp>
件名: Re: ディストリビューション(商品流通)に関する問い合わせ
日付: 2014年4月4日 22:53:39 JST

和田 様
お問い合わせ頂きまして有難うございます。
現在個人運営のレーベル様とはご契約を行っておりません。
...

もう個人で作ったCDを全国規模で流通させる方法は,Amazonぐらいしか残ってないかもしれません.

Amazon e託販売サービス

e託販売はAmazonが商品を預かって販売してくれるサービスです.手数料として売上の40%をAmazonが徴収するほか,9,000円の年会費がかかります.また,商品がCDの場合,次のような制約条件があります.

新商品の登録後や在庫が少なくなったときにAmazonから納入依頼が来るので,指定された枚数をAmazonの倉庫に送ります.初回の納入依頼は1〜2枚程度です.納入の送料はこちら持ち.商品が売れるとその翌々月末に売上の60%が支払われます.

たとえば,1,000円のCDを販売するとして,1枚だけの納入ならば,ゆうメールかメール便で200円弱の送料がかかります.CDが売れるとAmazonから600円支払われますが,納入に200円使っているので,収入としては400円.手づくりのパッケージの場合,CD-Rメディア,ジャケット用紙代,インク代,ケース,納入のためのプチプチ封筒などで150〜200円かかりますから,利益は1枚あたり200〜250円といったところです.さらに,年会費9,000円を考えると,年間40枚ぐらい売ってとんとん,それ以下だと赤字です.実際,まほらがは昨年までずっと赤字続きで,今年初めて黒字になりました.

同じ1,000円のCDでも,ライブ会場等で手売りすれば,1枚あたり約800円の利益になりますから,AmazonでのCD販売は広報・宣伝のため,あるいは,遠くてライブに来られないファンへのサービスと考えるのがいいかもしれません.

ダウンロード販売

ダウンロード販売と言えば,なんといってもまずiTunesでしょう.

iTunes

iTunesでダウンロード販売するにはどうすればいいか.まずはダメ元でAppleに正面から申し込んでみました.iTunesのコンテンツ販売のページからiTunes Connectの登録ページに行って申請してみましたが,約1ヵ月後,予想通りの返事が来ました.

差出人: iTunes Store <do_not_reply@apple.com>
件名: Your Application Has Been Reviewed
日付: 2010年9月21日 15:58:36 JST
宛先: wada@mahoraga.com

Dear Masaaki Wada,

Thank you for your interest in iTunes.

After careful consideration of your application, we believe that the most efficient way to get your content up on iTunes in a timely fashion would be for you to deliver the content through one of the several digital service providers with whom we currently work.
(以下略)

Appleと契約しているアグリゲーターのどれかを通じて配信しろとのことです.日本で利用するとすれば,次の3つぐらいでしょうか.

CDアルバム配信 初年度 2年目以降 支払率
CDBaby (US) $59 なし 91%
Tunecore (US) $30 $50 100%
Tunecore Japan (JP) ¥4,750+税 ¥3,810+税 100%

僕が検討したのはCDBabyとTunecoreです.CDBabyは初期費用高めで売上から9%の手数料を取りますが,一度登録してしまえばあとは費用がかからないのがいいところ.Tunecoreは,売上を100%顧客に支払うのが売りですが,毎年$50の手数料がかかりますから,ある程度販売が見込めるアーティスト向けです.2010年当時,日本国内の業者もいくつかありましたが,いずれも手数料が高すぎでした.今はTunrecore Japanが,リーズナブルな手数料でiTunes配信を行っているようです.CDBabyも日本向けのサービスを準備中のようです.

けっきょく僕はCDBabyを使うことにしたのですが,英語での申し込みはよいとしても,Social Security Number(米国納税者番号)が必要だったり,支払いがドル建てだったりして,日本人が利用するのはかなりハードルが高いと思います.

ちなみに,ほとんどのアグリゲーターはiTunesだけでなく,Amazon mp3など他のダウンロード販売業者にも配信してくれます.

Gracenoteデータベース

オーディオCDにはアーティスト名やアルバム名などの情報はデータとして記録されていません.iTunesでCDを読み込むとアルバム情報が表示されますが,あれはiTunesソフトがネットを通じてGracenote社のデータベースにアクセスし,得られた情報を表示しています.

Gracenoteに情報がないCDの場合,見つからないと表示されます.運悪く曲数や再生時間が別のCDと一致してしまい,間違ったアルバムとして表示されてしまう場合もあります.従って,自分で作ったCDのアルバム情報は,あらかじめGracenoteデータベースに登録しておく必要があります.

登録は,Gracenoteのサイトの説明どおりにすれば簡単です.Gracenoteに情報を送信する前に,アーティスト名,アルバム名,曲名など間違いや誤字がないかしっかりチェックして下さい.一旦登録されてしまった情報の修正は,やったことないですが,たぶん時間もかかり面倒だと思います.

Gracenoteに登録されるのは,アーティスト名,アルバム名,楽曲名,ジャンル,発売年です.

ちなみに,iTunesの場合,ジャケット画像はiTunes Storeデータベースから取得するので,アグリゲーター経由でAppleに提供したものが表示されるはずです.