Masaaki Wada (watercolor portrait by Jesus Guajardo)
作曲家 和田昌昭
Masaaki Wada
Composer
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  1. 著作権
  2. パッケージング
  3. 流通
  4. JAN
  5. ISRC
  6. 広報

レーベルの作り方 6. 広報

作曲,音響技術,パッケージング,流通までやって,最後に必要なのが広報です.が,広報だけはどうにもこうにも自力ではダメでした.

やれることは何でもやってみる

2006年ごろブログを書いて時々自作曲の紹介をしましたが,ブログを見て直接音源を聴いた人以外に広がって行きませんでした.曲に力が足りないのか,使ったブログが悪いのか,自分の性格の問題か,運の問題なのか,まるでわかりません.何がダメかがわからないという時点で全然ダメだと思います.

そのころ音楽系SNSのMySpaceが流行っていたので,そこに音源を掲載していろんな人に聴いてもらいました.そこそこの数の人が聴いてくれて,中には面白いと言ってくれる人もいましたが,そういう人の何人かとなんとなくネット友達になっておしまいでした.

ローカルのFM局の番組にゲスト出演させてもらったこともありますが反響はイマイチでした.

YouTube

まほらがを立ち上げる2010年ごろは,新しい音楽を求める人が行くサイトがYouTubeになっていたので,YouTubeにチャネルを開設してプロモーションビデオをアップロードしたりしました.

自分の曲だけでなく過去の名曲や最近の流行曲なども一緒にアップロードしたので,どういう曲が多くの人に好んで聴かれるのかわかりました.自分の曲に力が足りないことがわかって一歩前進です.

調査したわけではないですが,YouTubeで曲を探して聴く人は,聴いた曲に対してお金を払わないように思います.聴きたければいつでもYouTubeで聴けるわけですから.一方,ラジオやテレビで聴いてもう一度聴きたいと思った人は,YouTubeになくてAmazonで売っていたら買ったりするんじゃないでしょうか.ビジネスとして考えるならば,YouTubeへの出し方は少し考えたほうがいいかもしれません.

コンクール・コンテスト

無名の演奏家や作曲家が自力で広報活動する一番簡単な方法は,コンクールやコンテストで入賞することでしょう.専門家のお墨付きを使って自分を売り込む,ということ自体僕は好きではないのですが,何でもやってみないことには実際どういうものかわかりません.それで,島村楽器の録れコンに2006, 2007, 2008, 2010年の4回参加しました.結果は散々でしたが,2010年は「宿酔」でエントリーしていて,今となってはとても興味深いので結果をお見せします.審査員のアドバイスコメントです.

「試み」としてはある意味面白いアイデアでしたが、実験としては決して良い結果では無かったようで、むしろ「大失敗」といっても良いと思います。
加えて目指そうとしている「世界観」やその「想い」に対して「音楽表現」としての様々な感性やテクニックもまだまだ追いついていないという印象でした。
まずメロディーがまるで「詩」に合っていない感じを強く受けます。歌唱としても音程の不安定さが多く目立ちました。レコーディング作業に関しては色々と工夫されたようですが、肝心な「出音」の段階に既に大きな問題があり、「楽曲」としては方向性を完全に謝った感じでした。そして失礼ながら、中原中也の詩の世界観に関しての深い考察がまだまだ足りないと痛感しました。次回のエントリーに期待しています。(T)

コメント一つ一つは当たっている部分もあり,どうこう言うつもりはありません.僕が言いたいのは,この審査員Tさんは,後にYouTubeで80万回再生になる音源を聴いて,その可能性の片鱗さえ見いだすことができなかったということです.

つまり,こうです.コンクールやコンテストで悪い評価が返ってきたら,さっさと忘れることです.自分自身の評価を信じましょう.専門家の評価と世間の評価はまったく違うこともあるのだから,専門家の悪い評価に落胆するのは馬鹿げています.

もし運よく入賞できたら,その時はそれを使ってどんどん自分を売り込めばいいと思います.

何を目指すのか

音楽制作している多くの人は,意識的かそうでないかは別として,自分の作った曲がヒットして誰でも知っているぐらい有名になって欲しいと思っているんじゃないでしょうか.そのほとんどが,ついでにお金もたくさん入ってくればいいのにな,と夢みたいなことを考えているような気がします.

一方,他人の人気を利用したりライバルを蹴散らしたりしてまで自分の曲を売り込もうとする他のアーティスト達の姿を見て,ああいうふうにはなりたくないと思っている人も多いんじゃないでしょうか.無理に自分の曲を聴かせるのではなく,本当に共感してくれる人だけが聴いてくれたらそれでいい,と思っているタイプ.

僕自身は基本的には後者ですが,でも1回は聴いてもらわないと共感してくれるかどうかわからないわけで,その1回聴いてもらうところまでだけはがむしゃらにやろうと思いました.だから,AmazonにもiTunesにもYouTubeにも作品を出して露出だけは精一杯する.けれど,去る者は追わない.YouTubeやTwitterのコメントに丁寧に返信したり,メルマガを発行したりといったファンをつなぎ留める努力はやらない.本当に僕の音楽が好きな人だけ残ってくれたらそれでいいという考えです.そんな高慢な態度ではみんな去って行くだろうということも承知の上です.

何を目指すかは,人それぞれでいいと思います.どれがいいとか悪いとかありません.が,自分が何を目指しているのかは,よく考えたほうがいいと思います.それに必要なことはしっかりする.必要でないことはやらない.合理的に考えましょう.

テレビ

朝日放送の探偵!ナイトスクープに出演した反響はものすごかったです.それまで5年間のYouTubeアップロード動画の再生数の合計よりもはるかに多い人がたった一晩で宿酔の動画を見に来ました.視聴率20%越えのテレビ番組恐るべしです.

でもこれは,宝くじに当たったようなものです.僕は,どうすればテレビ番組に出演できるかも説明できませんし,テレビに出たからと言って必ず10万人がYouTubeの動画を見てくれるわけでもないでしょう.

自分でできることは,こういうチャンスが廻ってきたときに,ちゃんと準備ができているように普段から用意しておくことだと思います.4年前に「宿酔」動画をYouTubeにアップロードしていたからこそ,テレビ番組出演があったわけですね.