Masaaki Wada (watercolor portrait by Jesus Guajardo)
作曲家 和田昌昭
Masaaki Wada
Composer
English page
  1. 音楽遍歴
  2. プロとアマ
  3. 演奏
  4. クラシック音楽市場
  5. 聴く
  6. 音楽と脳
  7. 中原中也「山羊の歌」覚え書き
  8. ピアノ作品集

プロとアマ

レベル

professionは職業ですから,プロ(professional)はその技能なり技術なりを職業としている,それで食っている,という意味です.それが転じて,レベルが非常に高いという意味でもプロと言います.プロの音楽家は,お客さんからお金を受け取るのですから,それに見合った音楽を提供する必要があります.そのために音楽大学等で特別な訓練を受けた上で毎日何時間も練習をして自分の技術を磨いているわけです.だから,プロの技術レベルが非常に高いのは当然です.

一方,アマ(アマチュア,amateur)はプロに対する言葉で,職業ではない,つまり趣味でやっているという意味です.好きでやっているだけですから,下手でも文句は言われません.要するに自分が満足できればいいです.でも,プロを目指して子供のころから毎日特訓しているプロの卵もいますから,アマだからと言って必ずしもレベルが低いとは限りません.

プロはお金を受け取る以上レベルが高いのは当然.アマは自分が満足できればよくてレベルはピンキリ,ということです.

生活のための妥協

好きな音楽だけやって食って行けるなら,そんな幸せなことはないでしょう.でも,プロなら,不本意だけれど生活のために好きじゃない音楽をやらないといけないこともあるに違いありません.

好きじゃない音楽をやるぐらいなら,自分の好みなんて抹殺してしまい,リスナーが聴きたい音楽を届けることが仕事と割り切って,それをしっかりしていることがプロの誇りと考える音楽家もいると思います.もしも,音楽が楽しいことでなくて食うためだけの作業になってしまうのだとしたら,悲しいことです.

アマは,そんなことで悩む必要はありません.好きな音楽やってナンボです.お金は入らないけれど,その分自由です.自分がやりたい音楽だけやっていればいいです.本来音楽ってそういうものなんじゃないかとも思いますが,よくわかりません.もちろん,そのためには音楽以外の何かで生活のための妥協が必要になります.

プロはみんな,妥協が必要という共通認識を持っていますから,共同作業は得意です.アマの場合,趣味の合わない者どうしでグループを組んだ日には悲劇です.

音楽が好きで好きでたまらなくて,寝ても覚めても飽きること無く音楽やって,練習が楽しくて仕方なくて,好きな音楽しかやってないのに,いつの間にか他人がお金を払ってくれるようになって,なぜかわからないけどいつの間にか生活できている.好きな音楽ばかりやって妥協なんて一切していないけれどプロというのが理想ですね.

リスナーにとってのプロとアマ

普通コンサートに行ったりCDを買ったりしてプロの作品や演奏を聴く時は,自分が求める音楽的感動を得るためにその対価としてチケット代やCD代などという形でお金を支払うという意識になります.つまり音楽というサービスを買う消費者の立場です.

人にもよると思いますが僕なんかは,音楽を作っている人たちはそれで生活しているのだからサポートしてあげなくてはという意識も働きます.でも逆に,これで生活しているんだからお金を出してくれて当然だろうという態度をされると,プロならちゃんと客を満足させるのが先だろうと反感を感じてしまうので単純じゃないです.

相手がアマだと,聴き方が全然違ってきます.演奏家とリスナーというように立場は違っても,同じ音楽愛好家として一緒に音楽を楽しもうという意識になります.

プロとアマの間

人は物事を単純化して考えたがる生き物ですから,すぐプロかアマかと二分法で考えてしまいがちですが,本当はそんな単純なものじゃないです.音楽だけで食って行けるプロもいれば,音楽で副収入は得ているけれどもそれだけでは生活が成り立たないプロもいます.プロに混じって小遣い稼ぎをしているアマもいて,プロとアマの境界ははっきりしません.

実際は,本人が自分をプロと考えるかアマと考えるかという意識の問題のような気もします.一般に,自分がプロだと意識している人は,技術レベルやリスナーへのサービスについての責任感やプライドが強いです.アマと意識している人は,自分が楽しむことにより比重がかかっていると思います.

自分のこと

僕はギターが大好きで学生時代は毎日欠かさず6時間以上ギターを弾いていた時期もありましたが,プロのギタリストになりたいと思った事はないです.人前に出るのが苦手でしたから演奏家は無理です.友達だったプロのフルート奏者に誘われて,一度だけライオンズクラブの集会の余興かなんかで自作曲を2曲ほど演奏して50ドルを手にしてプロの香りを味わったことがありますが,それだけです.

学生時代,プロの作曲家になりたいと思ったことがありました.が,すぐに諦めました.音楽理論も知らず独学の自己流で作曲やってたんですから,プロでやっていけるはずはないです.

ところが最近になって,やっぱり本格的に作曲に取り組みたいと思うようになったんですね.でも昔のように,本気でやるならプロを目指さないとダメだという考えはなくなりました.すでに音楽以外で生活は成り立っているのでプロになる必然性はないわけです.もちろん,金も稼いでいないのにプロと名乗るわけにもいきません.

でもアマだと言うと,自己満足だけで終わりという印象を人に与えてしまいそうで気が引けます.アマだけれど,技術レベルや批判ということについてはプロの厳しさで望みたいです.

2008.2.16